プロぶってたい談 第1回小野光洋さん(後編)
どうもこんにちは。冨坂です。
今日は企画「プロぶってたい談」第一回(後編)をお送りします!第一回のゲストは千葉大学で卒業後も映画を撮り続けている小野光洋さん!アガリスクメンバーの淺越の千葉大の先輩でもあり、アガリスク創設当初からのお客さんで良きアドバイザーでもある小野さんのインタビュー後編をお届けします。前回にも増して二人はプロぶって語る...?
【プロぶってたい談】とは...?
プロぶってたい冨坂がプロ・アマ問わず様々なクリエイター・アーティストの方々にインタビューを行い、ひいてはプロぶって対談する企画。ついでに言うと立案・取材・テープおこし・執筆まで一人で行う完全な自作自演企画。
【今回のゲスト】
小野光洋(おの みつひろ)
自主映画監督。1966年4月27日生まれ。東京都出身。
高校時代より8mmフィルムでの映画制作をはじめ、千葉大学入学後、映画制作サークル「シネマウントフィルムパーティー」に入部。
卒業後、映画会社に入社し宣伝を手がけるが1991年に退社、それ以降はシネマウントフィルムパーティーを中心に活動。
現在96作目の監督作品「Light of December」を製作中。
「なんで続けてるか」
小 とにかくやりたがりなんだよねl高校時代からずっと
冨 何がガソリンなんですか?
小 卑屈なルサンチマン。前回ダメだったってのがバネになる。前回よかったよりダメだったときのほうが
冨 最近ルサンチマンって言葉マイブームですもんね。
小 そうマイブーム 富野も行ってたし。まぁ完成形が無いからね。いつか完成系というか「これは...!」っていうのをやりたいからね。それにとにかく動きたい。モチベーションの持ってき場かな。
冨 一番映画撮りたくなるのは何をしているときですか?
小 何もしてないとき。撮り終わったときは絶対一ヶ月くらい落ち込むから、そのあと上がり調子になったときかな。躁うつ病ですね(笑)全然ストーリーとか決まってないんだけど、撮りたくてしょうがない
冨 「このストーリーを撮りたい」とかじゃなくて「映画を撮りたい」と?
小 そうそう。
冨 なるほど。我々は今のところ半年に一本長いのを作ってるんですけど、いざ自分だといつだろうなぁと。
小 いつですか?
冨 打ち上げで例えば徹夜でカラオケにいるときかなぁ、って。そのときに「ここがダメだった」「次こんなのやりたい」って
小 演劇だからかなぁ。
小 あと、ガソリンといえば、映画には高校時代にはまったんだけど、仕上げの、文化祭一日前の雰囲気。「ビューティフル・ドリーマー」ですよ。アレを知っちゃったからかなぁ。ドーパミンがガンガン出る。麻薬ですよね(笑)
冨 前夜のあの感じですか
小 ハレとケの、ケをすごしてると、ああいうドーパミンの分泌をやりたい。
冨 「ハレの一歩手前」ですよね
小 そうそう「もう一歩で」っていう。ハレというか当日完成した後って何も無いから。映画は。でも一歩手前のそこで「生きててよかった」って実感する。
冨 「自分はコレをやる人だったんだよ!」っていう?
小 そうそう。「業」というか、それをしっちゃったっからそこから離れられない。1回就職しても。
冨 でも離れる人ってちゃんと離れるんですよね。
小 腹をくくるって言うか、青春時代の終わりってことかな、地に足をつけた...。あとは逆に「家庭をもつ」とか「出世」とか他のドーパミン分泌物質を見つけるってことかもね。
冨 あぁ。ただそっちを選んだだけ、ってことかもしれないですもんね。
小 例えば、おれ映画の宣伝してたけど、ヒットすると「やった!」ってなる人もいるからね。
冨 ならなかったんですか?
小 ならなかったね。下っ端だったからかな...。でも自分でなんかやらないとダメですね。映画見ても芝居見ても。
小 あとはもっと野望を持ってやる人も多いよね。トップというかプロになる、っていう。で、プロになれないってわかった時点で諦めるとか。こないだもある後輩でクレイアニメをやろうとしてる人が「パッションがなくなった。IT企業に就職します」とかブログに書いてるのを見て悲しくなった。普通の人はそうなのかなぁ。おれはパッションとモチベーション常にあるんで...。
「『やる人』と『なる人』」
小 事あるごとに言ってるけど、おれは「やりたい」んですよ「なりたい」じゃなくて。「なりたい」人がプロになるんだと思う。俳優もそうじゃない?
冨 それについて最近考えるんですけど...どっちも聞くんですよね。「『なる』で考えたほうがいい」って人と、「『なる』のはゴールじゃないだろ。結局『何をやりたいか』で『なる』のなんてその手段じゃん。」って考えと。
小 おれは完全にそっちだなぁ。
冨 例えば後者の考え方だと、「なったあとの奥にボールを投げてるからたとえ失速してもなるところには落ちる」っていうけど「やるよりもまずなるで考えたほうがいい」って人もいれば。
小 おれは映画監督になるって気は全然ないんだよなぁ。よく専門学校行って監督になるって人もいるけど、それよりは、まずやっちゃいたいと思うから。
冨 おれもそうなんですよ。シナリオスクールなんて行く気ないしなぁ...。
小 おれと同じだ。それ危険だよ(笑)
冨 やばいですよねぇ(笑)
「映画制作の何が好きか」
冨 映画作るのも色々な工程というかパートがあると思いますけど、何やってるときが一番楽しいですか?
小 撮影だねぇ。
冨 ひらめく感じですか?「こう撮ろう」って。
小 ひらめくのは脚本書いてるときだけど...。「こう撮ろう」ってのがどういう意味で言ってるかわからないけど、おれの撮り方は現場主義だから、絵コンテとかも切らないし、晴れてたら青空を撮るし、役者がノッてたら長回しするし。
冨 じゃあその...役者とかそういう環境とかけ合ってる感じが撮影の醍醐味...
小 そうそう。ま、多少イライラもするけど。時間が決まってたり、日が沈むケツカッチンとか役者のバイトのケツカッチンとかの中で「やんなきゃやんなきゃ」ってせめぎあってる感じが。頭フル回転させて。
冨 お客さんと完成品を見ているときは...?
小 いや、それはもう針のムシロですよ。自分の心を見せてるわけだから。逃げ出したい(笑)例えウケる映画であっても。
冨 そうなんですか。
小 撮影楽しいですよ...?
冨 やっぱり映画監督って撮影が好きなもんなんですか?
小 いや、脚本が好きな人もいるよ。無限に広がるから。撮影は有限だけど。おれは書くの脚本嫌いなんですよ。いつも前日に書いちゃう。
冨 ギリギリになるまで...。
小 遅筆ですから(笑)聞くところによるとおたくもそうみたいだけど...。
冨 (笑)やばいんですよ...。
「役者について」
小 だからあんまりおれは台詞にこだわらない。で、役者...劇団とかから連れてくる役者は一字一句台詞をちゃんと言おうとする。台詞をだいじにするから。でもおれは「そんなのいいよ」って「そういう空気でやって」って。
冨 それちょっとわかります(笑)
小 山下敦弘とかマイク・リーみたいに、脚本なしでリハーサルやって撮る、っていう。そういうのやってみたいなぁ。
冨 でもそれ役者が相当上手くないとできないですよね。上手くてかつ「わかって」ないと。
小 演劇部からよく役者を引っ張ってくるけど、言っちゃうとそれなりに基礎は出来てるけど...滑舌はいいし表現力はあるし...でもいかんせんやっぱりオーラはないよね
冨 オーラは難しいですよね。そもそもオーラってなんなんでしょうねそもそも...。
小 例えばデブの人とか。デブの人はデブっていうオーラがあるし。普通の人ってのが一番難しい。極端な話ドラえもんみたいな、スネオがいてしずちゃんがいてジャイアンがいて、とか、見た目だけでキャラクターをあらわす力っていうか。
冨 あぁ、キャラクターですか。
小 演じてそれをフォローしようとするんだよね演劇部の人は。でも「良いんだよ、素を出せば」って。
冨 がんばってそれを組むんですよね。自分でプランを
小 演劇をやりたい人って「自分じゃないもう一人の自分を演じること」に達成感を覚えるんだよね。でも映画的には、特におれの映画ではそれは必要としないから。「君に合わせてホンをかいてるんだから」って。何回かやってると大体その人のキャラクターが見えてくるから。
冨 キャッチボールが出来てくると、逆に役者に気づかされることってないですか?
小 それはもちろんあるよね。
冨 いや、役者のことに気づくってのもそうなんですけど、役者にホンのことを気づかされるっていうか。
小 ほう、それは
冨 自分とこの話で申し訳ないんですが、こないだの芝居(ゴーストアクターズ)で塩原が言った台詞でありまして。終盤の「おれ操作する機械無いじゃん」っていう別にネタでもなんでもない台詞なんですけど、それを彼はちょっと笑いが起きる言い回しで言ったんですよ、本番で。それを見て「あぁ、この台詞はこうやって言わせなきゃいけない台詞だったんだな」って気づいたり。
小 芝居は難しいですねぇ...。Aさんの話ばっかりしてていいのかな...。彼女はこっちが言おうとすることを5言えば10わかってくれる感じで。「おれの要求はこんな感じだな。コレを要求してるんだな」って
冨 そういうのってすごくやってて気持ちいですよね。
小 あとは単純に「やってくれる」っていう。「道端に寝転がって」とかいうと寝転がってくれるし。
「キャラクターについて」
冨 キャラクターっていつもどうやって考えてます?
小 キャラクターって言うと立場?性格?
冨 性格ですかね。
小 そうだなぁ。。まずストーリーがあって、そこにキャラを乗せて...その段階ではまだ性格が決まってなくて。それからキャスティングしてキャスト決まってから「ヒステリックにする」とか「無口にする」とか。
冨 あ、キャストに合わせて。
小 そうそう。「この人はヒステリーできる人」とか「この人は無口なほうが好きだし」とかできめるかな。あとはやっぱり役者も学生で、良いところも悪いところもあるから、良い面を使うとかね。それでウィークポイントは映さない。太めの足は映さない、みたいな。
「群像劇のポイント」
冨 群像劇とか前結構撮ってたみたいですけど、どういう点に気を使ってたんですか?
小 あ、群像劇を撮ろうとしたのは、昔「釣りバカ日誌」を撮ってた栗山民夫っていう監督がいたんだけど、その人とお酒飲むような仲になって、「何人までグループショットできる?小野くん」って言われて。曰く、群像シーンで全部に目が届いてるかどうかで演出力が決まるんだって。それを25,6歳のときに聞いて「じゃあやってみよう」って思って。群像劇って行っても「さよなら映画の日々」は群像劇だけど、他のは二人と他周りにいたりするぐらいだけど。
冨 そこで何人を動かせるか、ですか?
小 キャラクターを書き分けたり。そこはキャラクターの引き出しの数がモノをいう。で、最初は全員の動きかなって思ったんだけど、
冨 何人に芝居させるか、とか?
小 いや、そうするとうるさくなっちゃうから。
冨 確かに。うるさくなりますね。
小 そこで学んだのが「手を殺す」っていう。これは北野武から学びました。手で何かをしている状態、しかけている状態で静止させたりとか。カバン持ってたりとか。
冨 あ、それなら止まっていても何か動きというか...意味を持たせられますもんね。違和感が無くなる...。
小 最初はすごい下手だったんだけどね。さよなら映画の日々とか。しゃべるとき全員に台詞ふってたり。舞台劇っぽかったな...。しゃべらないヤツはしゃべらなくて良いんだよ。だってテーマに関係ないんだもん。ま、それから色々学んで。一つの画面にいなくても一つの話の中に何十人もいて書き分けられたら良いなーって。
冨 何人ぐらい書き分けます?一番多かったのってなんでした?
小 一番多かったのは亀を探すヤツかな。でもそこら辺で「引き出し無かったら宛て書きっていうか相手に任せたほうがいいな、って。その人のキャラを出すように促してやればどうせみんな違う人なんだし。」というのをあのあたりで学びました。
「演出について」
小 演劇もやってみたいなぁ
冨 演劇やるとしたらどんなのやるんですか?
小 ワンセットのヤツ。なんとかっていう美術の人がいて、三谷幸喜の「コンフィダント・絆」もNODA・MAPの舞台もやってるんだけど、あの人の美術がすごい。たとえば「BEE」のときなんか、舞台上にでっかい一枚の紙があって、スクリーンにもなるし、切り抜いたら窓になってっていう。ワンアイデアでおしてくっていう。
冨 そういう演劇的な演出ってやったらすごい面白いと思うんですけど、全然わかんないんですよねぇ。演出って何なんだろうなぁって。
小 そりゃ全てでしょ。
冨 その...何を考えてみんな演出をやってるんだろうなぁって。テーマに向かってやるもんなのかなぁ...?と。
小 演劇は必ずしもそうじゃないんじゃない?いつもどうやって作ってるの?役者とキャッチボールとかで...?
冨 毎回テーマはあるんですけど、主と従でいうなら主じゃないんですよね。主題じゃないって言う(笑)
小 それは映画と演劇の違うとこだなぁ。
冨 どちらかというとテーマよりも「これがこうなって、こうなって、こうなって、で、こうなる」っていう展開というか、完成系のネタがあって、そこにむかって進んでいく感じなんですよね。なので「こういうものを表現する演出」とかってあんまりわかんないんですよね。ワンシチュエーションで、物語の外から音とか照明とか入れた事ないんで。
小 ま、それはそれで良いと思うけど
冨 なんでそういうのをどうやっているか知りたいんですけどね。映画だとBGMとか光の感じも大きいじゃないですか?
小 そうだねぇ。光だとトップライトにして当てれば重厚な硬いのに。影を濃くすればより硬く、影を抑えれば柔らかくなるし。
冨 BGMはどうしてるんですか?脚本の段階で決まってるんですか?
小 いや、映画をつないで見てみて、ダルいところに入れたり、淡々としてるな、ってところに入れる感じだね。あんまり劇伴的に盛り上げるところでいれたりはしない。かったるい所に。
冨 あんまりそういうところで入れるとテレビドラマみたいになりますもんね。
小 あとはオープニングとエンディングに。
冨 あ、そうですね。オープニングは無いとなんか変ですもんね。
小 音楽無いのやりたいなぁ...。
冨 でも音楽全くないとキツそうですよね。
小 最近ハマってるジャ・ジャンクーなんて全然音楽ないからね。おれもまだまだですよ...。
「今後やりたい映画」
冨 最近のテーマが「孤独」だと思うんですけど、「どういう映画を撮りたい」っていう理想系みたいなものってあるんですか?
小 どういう映画...。あとで後悔しない映画かな。今までそんな映画一本も無いんですけど...。見て色々良い映画があるじゃないですか、ジャ・ジャンクーの「長江哀歌」とか山下敦弘とか。そういうのに近づきたいってのが一つにはあるよね。あとは理想系って言うと...自分のやりたいことと観客のウケが合致したとこかな。いままで全然ないんだけどね。ウケをねらえばウケるし、でも自主なんだからやりたいことをやりたいし。
冨 今やりたいことってどんなことなんですか?
小 次やりたいのは「命」をテーマにしたものですね。次の次にするかどうか迷ってるけど。
冨 あの...ひとりをただ生かすために何百人がただ働いてるって言ってた...
小 あぁ、それはALSの話ですね。それより次やろうとしてるのはダウン症児を妊娠しちゃって堕ろすか堕ろさないか、とか。
冨 それが今のところやりたい映画ですか。
小 でもその前にコミュニケーションの話やるかもしれない。あとこないだやった鬱病の話もあるけど、あれも中途半端だったからちゃんとやりたいし...やりたい話はまわりに沢山ありますよ。ALSの「一人を生かすために何百人もが動く」ってのもやりたいなぁ。
冨 でもなんで「命」がテーマなんですか?
小 それは去年いろんな人が死んだから。周りに死が多かったからね...。
冨 だから割と最近はそういう重い話が多い、と。
小 そうだねぇ。
冨 でも今作ってる短編はその系統じゃないですよね。
小 それはですね、順を追って話すと、短編映画際みたいなのをやるって話しがあって、そのときにテーマがあったほうが良いってことで「希望」と「絶望」がやりやすいだろうってことで。
冨 あの映画だと「希望」ってのはコミュニケーションとか気持ちが通じているというか思いやりというか、「気持ちが通じている」ということを希望としてますよね。
小 そうそう。で、絶望は環境から来るんだろう、と。まぁホントはそうじゃないんだけど、あの映画ではそういうことになってます。車椅子なのにエレベーターが無い、とか、風邪で寝込んでいるのに誰も助けてくれない、とか、仕事が忙しくて鬱になる、とか。そうやって絶望は外から来るものっで、それには「気持ちのつながりなんじゃないかな」っていうコンセプトで撮ってみたんですが。どうでしょうか。
「小野さんにとって『映画』とは?」
冨 まぁこの...なんというかすごく大雑把というかざっくりな質問なんで答え方は任せますが、テレビチャンピオン風に言うと、小野さんにとって「映画」とは?
小 「生業」ですね。あとは「業」というか。一生ですよ。
冨 好きとか嫌いとかでなく...
小 だって...辛いじゃないですか、やってて。辛いことが八割ぐらいな気がする。
冨 社会的に仕事としてるかどうか、とかでなく...
小 そうですね。まぁ「生業」っていうと社会的な仕事って意味もあるらしいけど
冨 もっとどっちかっていうと根本の?
小 そこまで重いかどうかは知らないけど...でもどんなことがあってもやめないでしょう...。
冨 じゃあ「業」ですか...。
小 首から下が動かなくなっても書いた小説家じゃないですけどね。
小野光洋さん、貴重なお話ありがとうございました!新作も楽しみにしています。
コレをご覧の皆さんも、2/24は是非シネマウントの上映会へ!
「定期上映会 CINEMOUNT FILM PARTY vol.38」
【日時】2/24(日)13:00open / 13:30start
【会場】浅草・すみだリバーサイドホール・ミニシアター
(各線浅草駅徒歩10分/墨田区役所1階)
【料金】入場無料
小野さんの新作短編集やアガリスクメンバーでもある淺越の新作映画も封切の、怒涛の新作ラッシュ240分!是非ご来場ください!
2008/02/19 トミサカ | 個別ページ | コメント(0)