ホーム > 企画情報 > Love Situation'21 > 第一回「夏の湖のボートの上で」

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今、ここでだけ

―夏の湖?ボートの上の男女?何の冗談だ?

自分のおかれた状況を客観視し、心の中で笑ってみる。
なるほど、これが自嘲ってやつか。
容赦ない日差しは水面を光らせ、君の指にあるアイツからの指輪まで光らせる。
「暑いね」
と君。
「止まってると風ないからね」
と俺。
「じゃあ進もう!ハイ、キリキリ漕ぐ!」
「それ俺だけ暑いから!不平等条約だから!」
「いいからいいから。」

まったく、なんで止まってると思ってるんだ。
気づかないのか、この牛歩戦術が。
少しでも一緒にいたいからこその苦しい粘りが。
って、今どきの生身の若者に何言わせるんだ。
言ってはいないけど。
「ボート乗りたい」
子供みたいにねだった君も、本当はアイツとだから乗りたかったんだろう。
俺と二人になってしまったけど前言撤回しないでくれるなら、
俺はそこにつけこませてもらおう。

―2本のオールは俺のもの。舟の行方は俺のもの。舟の上でだけ君は俺のもの。

彼女の相手を俺に任せるアイツ。
仕切る立場ってのも大変だ。
お前の親友の心のうちを知ってるか?
いや、まさかこの状況はアイツからの牽制球なのか?

会議かのように様々な意見が頭の中を飛び交う。
皮肉な状況だ。
でも、君といられる最高の瞬間だ。
辛いのか嬉しいのか、判断すらつかない。
ただひとつ言えるのは
―このまま時がとまってしまえばいいのに…
とは上手くいったものだ、ということ。
「眠くなってきた」
そうだ、このまま眠ってしまえばいい。
「やっぱ寝ちゃだめだね。どっち岸だっけ?」

いや、ずっと岸に着かなければいい。
ここが太平洋かなにかだったらいい。
ただ君の向かいに座っているだけでいい。
万が一でも、彼のことを忘れてしまえばいい。

―2本のオールは俺のもの。舟の行方は俺のもの。舟の上でだけ君は俺のもの。

それでも舳先は、湖岸に向かって進み始めた。

冨坂友


書評

坂口
これさぁ、なんかヤダ。
愛場
難しい言葉使っちゃうとこがね。
坂口
あぁ、わかる。
近藤
わかりやすくして欲しい。
坂口
これを本当に常に考えていたら気持ち悪いよね。
近藤
痛々しいよ、これ。
坂口
わかる。なんか痛い。
近藤
どうしたの!?そんなつらいことあったのかなって。
坂口
なんかさ、これGo as Operationっぽくてヤダよね。
愛場
それじゃ、なに?これは富坂先輩の?
坂口
それ不平等条約だからって、岸の台詞じゃないですか。
あー!!
坂口
わたし絶対そうだと思ったんですけど。
愛場
うん、あたしもそう思った。
近藤
もう確実にこれは決定だなと思う。
坂口
あー、そう思うとキモイ。ただ君の向かいに座っているだけでいい、だよ?万が一でも彼のことを忘れてしまえばいい、だよ?なんか女みたいじゃない?ネチネチしてる。
愛場
でも、切ないよね、これ。
坂口
確かにそういう恋してる切ない感じかなと思うけど、表現の仕方がキモイ。
近藤
付け込ませてもらおうっていうのが俺様系。
坂口
(こういうこと思ってる男は)あたしヤダ。絶対いや。
愛場
切ない恋をしてる人なら私は別にいいと思う。
近藤
あたしも別にいいんだけど、長いことうじうじしていると「(この人は)どうしようもないヤツだな」ってなっちゃう。浸るのはぜんぜんかまわないんだけど。
坂口
あ、そうそう。うぬぼれっぽくない?こういうひどいことに陥っている自分が良いみたいな。
近藤
俺、いま超光ってるみたいなね。

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「みんなのへや/無縁バター」
@渋谷GALLERY LE DECO 4
2010.09/14-19

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