
第一回 最強の飲み物 本選
抽選の結果選ばれた本選の組み合わせは以下の通りです。
<第一試合>眠眠打破VSクリスタルガイザー
<第二試合>力水VSバヤリース
<第三試合>ゲータレードVSベルデッキオ
<第四試合>バンホーテンVSジョア
以上がトーナメントの本戦カードである。
私としては第三試合が実力者同士の拮抗した試合になるのでは、と楽しみでならない。
そしてついにゴング!
まず主催者推薦枠の「眠眠打破」VS鉄壁の皇帝「クリスタルガイザー」!
試合開始と同時に、眠眠打破がその名のとおり猛ラッシュをかける!
打つ打つ打つ打つ!
しかしそこは皇帝、身じろぎもせずその水晶のようなボディで攻撃を受けきる!
所詮、眠眠打破が打破できるのは眠気だけなのである。
疲労困憊し、何よりも自らの攻撃が全くダメージを与えていないことに驚く眠眠打破。
その顔面に硬質の拳が飛ぶ!一撃で崩れ去る眠眠打破!
第一試合はクリスタルガイザーの圧勝で終わった。
つづいて第二試合、炭酸水界の横綱「力水」VS果獣「バヤリース」の一戦。
バヤリースにとっては相手が悪かった。
力水の誇る純粋なパワーの前には、ミカンごときでなす術はない。
張り手一閃。バヤリースは場外に吹き飛んだ。
そして屈指の好カード、キングオブスポーツドリンク「ゲータレード」対、闇ワインの帝「ベルデッキオ」。
王か、帝か。どんな試合になるのか、全く予測がつかない。
しかし、決着は一瞬のことだった。
試合が始まっても、両者は一歩も動かなかった。
いや、動けなかった。
武術に秀でたものなら、二人の精神が争っているのがわかったろう。
ともかく、そのままどのくらいの時が流れたろうか、突然二人が空中で交錯した。
そして立っていたのは、ベルデッキオだった。
明暗を分けたのは、経験の差か?
歴戦を勝ち抜いたベルデッキオだからこそ、一瞬の隙が見抜けたのかもしれない。
そして、本戦最後は「ヴァンホーテン」伯爵VS乳酸の雄「ジョア」。
この勝敗も、火を見るより明らかだ。
およそ品格というものはどうしようもない。これは精神の余裕の持ち様にも関係する。
ジョアには、その決定的なものがかけていた。
試合前から完全に呑まれていたジョアに勝機があるはずもなかった。
こうして準決勝にコマを進める四名が決定。さ、早速はじめよう。
攻と防。
力水とクリスタルガイザー。
ともに透明ながら正反対の強みを持つ両者の戦いは、今大会のベストバウトといえるかもしれない。
攻める力水。突っ張る、ぶちかます、そして投げる。
守るクリスタルガイザー。しかし耐えるだけでなく、隙あらばその水晶の拳を叩き付ける。
その度に、固いもの同士がぶつかり合い、硬質な音を響かせる。
最後は技術が勝敗を分けた。
力水が突進するクリスタルガイザーを掴み、その勢いのまま宙に放り上げた。
柔道で言うところの、裏投げに近かった。
どんな衝撃にも耐える自信はあった。
しかし、地球という最後の敵が放つ、重力加速度の前には耐えられなかった。
砕け散る皇帝。力水が、横綱の貫禄を見せ付けた瞬間だった。
高貴。この対戦にふさわしい言葉はこれだろう。
「サー・ヴァン=ホーテン」VS「ベルデッキオ」は、しかし思わぬ結果となった。
ヴァンホーテンが不戦敗を宣言したのだ。理由はひとつ。
「女とは戦えぬ。」
ベルデッキオはなんと、女帝だったのである。
驚愕の事実。しかしそれ以上に、その発言はインパクトを与えた。
べルデッキオの不戦勝。そして決勝進出。
しかしベルデッキオはそれを受け入れない。
「他者から与えられた勝利などいらぬ。それに私はお前の戦いを見てみたい。」
そうしてリングをおりるベルデッキオ。
ヴァン・ホーテンは苦笑しながらも、彼女の意思を尊重した。
こうして決勝のカード、力水VSバンホーテンが決定した。
横綱か伯爵か、しかし決着は意外な形でついた。
力水の動きの切れが悪い。それはそうだろう。あのクリスタルガイザーと打ち合ったばかりだ。
それに対しヴァンホーテン卿は不戦勝。体力の差は決定的だった。
それでも力を振り絞り、巨体で圧倒しようとする力水。それに答えるべく全力で相手をする伯爵。
最後はヴァンホーテンの掌底が力水の顎をとらえ、巨体は地に伏した。
こうして「最強の飲み物トーナメント」はヴァン・ホーテンココアの優勝で幕を閉じた。
しかし、まだまだこの世には飲み物がある。
今回出場していない者も、それぞれ牙を研いでいるのかもしれない。